新潟県公立高校入試の倍率マジック

新潟県の公立高校には「理数科」や「学究科」のように、普通科にちょっと特色を加えた学科がいくつかあります。最もメジャー・・・特に大学受験を視野に入れて勉強を頑張っている(頑張ろうとしている)人たちにとっては・・・なのが「理数科」でしょうか。新潟県の公立高校入試、以前は「学区」がありまして、昔の学区で考えた時にそれぞれのエリアで入試難易度が最も難しかった高校に理数科が設置されています。新潟高校、長岡高校、高田高校、新発田高校・・・三条高校は2025年3月に実施される入試から理数科が設置されます。

貼付している画像とこの理数科・普通科の関係性、倍率についてみてみましょう。

 


 

(1)理数科とは何ぞや

一部の方を除いて、数学は苦手とする人間が多い科目として有名です。文部科学省が実施する学力テストでは、新潟県民の数学(算数)嫌いはデータとしてはっきりと出ており、新潟県民は全国平均に比べてさらに数学(算数)が嫌い(苦手)な傾向にあります。中学校の頃から

  • 計算はできるけれども文章題ができない
  • 計算はできるけれども図形ができない
  • 方程式はわかるが関数ができない

みたいな苦手トークは多くの方が経験していると思われます。中学校の時はそうでもなかったとしても、

  • 高校入試や高校生になったとたんに数学がわからなくなった

というようにつまずく場合も少なくありません。それほどまでに数学の壁は高いのです。一方、大学入試となると、学費が安く済んで誰もが知っているような有名な国立大学ほど試験科目として数学が必須になり、重視されます。ですから、中学高校のどこかで数学でつまづくと、進路にも大きく影響をしてしまう。だからといって頑張ってなんとかできるほど甘くない。

そんなやっかいな数学、加えて(中学レベルでは単元による差はあるものの)数学と同様に複雑な計算であったりしっかりとした理解力が求められる理科をとことん極めていくことを目的とした「理数科」というのは、上記の理由から一筋縄では合格はできませんし、そんなところだからこそチャレンジのし甲斐もあることになり、皆さんが目指す関門となり、特に新潟県におけるその最高峰となる新潟高校理数科は倍率が高くなる傾向が続くことになります。

さらに、それぞれの理数科は2年次などから「メディカルコース」「サイエンスコース」に分かれます。文字通り「メディカル」は将来的に医者など医療系の職業を考えている人間に特化したカリキュラムや体験ができるようになっているのがポイントです。これは新潟県が全国で最も医師不足が顕著であるという自治体の都合によるものですが、それでも非常に人気が高い「医師になりたい」という夢を実現するには「理数科に進学してメディカルコースを選択する」ことが一番の近道となる訳です。

この「メディカルコース」は高校生のうちから病院への見学に行くことができたり、高名な医師が高校に足を運んで講演をしてくださったり・・・などなど医師になる夢を持った子供たちがさらに意欲を高めて目標達成に邁進できるような仕組み・仕掛けがたくさん施されており・・・医師への道というのは皆さんが思っている以上に困難な道ではありますが・・・子供たちが前向きに頑張っていくことができる環境が用意されていることになります。

 

 

(2)理数科の倍率

2024年度入試(2023年度の中3の子供達が受験したもの)に関わる情報を改めてまとめてみます。

  •  初回の志願状況(2024年2月21日)として新潟県から公表された数値
    • 理数科 143(志願者)/  80(定員)=1.78倍
    • 普通科 322(志願者)/280(定員)=1.15倍
       
  • 志願変更後の状況(2024年2月29日)として新潟県から公表された数値
    • 理数科 144(志願者)/  80(定員)=1.80倍 2/21から志願者プラス1
    • 普通科 307(志願者)/280(定員)=1.09倍 2/21から志願者マイナス15

ご覧のように、新潟高校理数科は(過去3年の中では最も低倍率でしたが)2024年度入試においては県内で最も倍率が高い学科となっており、合格者80に対して不合格者64という文字通り2人に1人しか合格できないというかなり厳しい競争になっていました。一方、新潟高校普通科は志願変更でやや人数を減らしています。母数が多いので「1.09倍」という数字だけ見ると穏やかにも見えますが、それでも30人近い人数が不合格になる訳ですが、無風というわけではありません。

で、サンプルの画像は年度が切り替わった後に新潟県から発表されたデータになります。改めて記載すると、

  • 入学状況=入試結果として2024年4月以降に新潟県から公表された数値
    • 理数科   80(合格者)/   94(受験者)=倍率1.18倍
    • 普通科 280(合格者)/ 357(受験者)=倍率1.28倍

はて、理数科の受験者が94人しかいないことになって、普通科の受験者が357人にも膨れ上がっているように見えます。しかしよく見てください。2月29日の最終志願状況と比べると理数科は(144から94で)マイナス50、普通科は(307から357で)プラス50になっていますね。これが「倍率マジック」なのですね。

 

これは「第2志望制度」というものが影響しています。つまり「理数科を志望するものは、第2志望として普通科を選択できる」という仕組みで、理数科の合格点数に足りなかったとしても普通科に合格できる点数を取っている場合は、スライドして普通科に合格したことにしてくれる、というものです。試験を受けなおしたりする必要もなく、理数科の試験を受けるだけで理数科がダメでも普通科なら合格できるかもしれないという1粒で2度おいしい的な仕組みです。もちろん、理数科の合格には点数が足りず、普通科に合格する点数にも足りない場合はスライドせず不合格になります。

いずれにせよ、上記の数字は「理数科を志願した144名のうち、理数科の合格には点数が足りなかったが普通科の合格点数には達していたので、スライドして普通科に合格(「転科合格」といいます)した生徒が50人いる」という意味合いになります。ただし「その50人は(第2志望なので間違ってはいないのですが)普通科を志願した(受験した)ことになった数字として最終報告される」のが話をややこしくしていることになるのですね。以下に、理数科を志願(受験)した144名についてまとめます。

  • 理数科に志願した生徒144人
  • 理数科に合格したのは定員通り80人
  • 64人は理数科合格に点数が足りなかった
  • しかし64人のうち50人は普通科の合格点には達していた
  • ⇧の50人は普通科を受験して普通科に合格した形(=転科合格)で発表される=理数科の受験者が減って普通科の受験者が増えたように見えてしまう
  • 64人のうち普通科に合格した50人を除いた14人が、新潟高校に不合格になった生徒となる

こんな感じです。さすが理数科を受験するだけの実力を持った生徒ですから、理数科に不合格になったそのほとんどの生徒が普通科に合格している訳ですが、うち14人に関しては普通科にも合格できず不合格・・・新潟明訓や新潟第一などの私立高校や効率の2次募集に回っていった、ということになります。

 

 

ということで、今回の論点は2つ。

  1. 将来的な大学進学を考慮し、より難易度の高い学習を積み重ねたい場合は理数科を目指すのが良い。そのために小中の段階でしっかりと算数と数学について本質を理解する勉強しておくべき。
  2. 各エリアの理数科は倍率が高くなる傾向にあり、資料をしっかりと見ないと傾向を見誤る。倍率は志願状況を見て把握する必要あり!(※新潟県のWebサイトに、志願変更後の資料が掲載されていない場合が多いのでこれまた注意です)

以上のようなまとめ方になります。ややこしいので詳しくは塾屋に頼ってもらいたいところです。そして可能性があるなら・・・中学校の定期テストでは何もしなくても数学でほぼ100点ばかり取ります・・・みたいな人はぜひ理数科、できれば新潟高校の理数科を目指して頑張ってほしいと思います。勉強のペースが速くてついていくにもしんどい思いをするかもしれませんが、高い志と高い学力を持った仲間たちに囲まれた充実した日々を過ごすことができるでしょう。

コメントを残す